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Tuesday,October 25
『ゴジラ展』北海道立近代美術館 (12 photos)
北海道でのお墓参りも無事終わり、あとは帰りの飛行機に乗る日を待つだけ。
なにもすることがなく、実家で自堕落(笑)していたところ。
父「北海道立近代美術館で『ゴジラ展』やってるぞ」
ふぁっ?
『ゴジラ展』?
ゴジラってあのゴジラ?
ちょうど世間は映画『シン・ゴジラ』の上映でワイワイ賑やかになっていたのは知っていましたが、『ゴジラ展』が開催されていたとは知りませんでした。
さっそくネットでチェックしてみたところ……。
やってました『ゴジラ展』。
北海道立近代美術館
http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/knb/
『ゴジラ展』@北海道立近代美術館
http://event.hokkaido-np.co.jp/godzilla/
『ゴジラ展』@福岡市美術館
http://www.fukuoka-art-museum.jp/godzilla/
どうやら『ゴジラ展』は、全国をまわる感じではなく福岡市美術館と北海道立近代美術館の南北2箇所でしか開催されていない特別展であったようです。
北海道の主催は北海道立近代美術館、北海道新聞社、北海道文化放送。福岡の主催は福岡市美術館、西日本新聞社、毎日新聞社、九州朝日放送、テレビ西日本、TVQ九州放送。地方ローカル一色です。首都圏ではほとんどといっていいほど報道されておらず、わたしが知らなかった理由がわかりますね。
映画『シン・ゴジラ』の公式ホームページとかをチェックしているような人なら『ゴジラ展』の存在を知っていたのかもしれませんけど、わたしはそこまでじゃなかったのでまったくの寝耳に水でした。
しかしながら、「ゴジラ」は日本の特撮映画を牽引してきた存在。
美術館がどんな展示をするのか興味がわき、帰りの飛行機に乗る当日、2016年10月12日、北海道近代美術館に行ってきました。どこまで撮影できるかわからなかったので、デジタル一眼の持参はやめて、スマホのみを持っていきました。
それでは、写真とともにレポートを。
北海道立近代美術館前にでていた『ゴジラ展』の看板
おお、まさしくゴジラです。
『ゴジラ展』の文字デザインがいかにもで凝ってますね。
ちょっとブレちゃってますけど、美術館の入口脇に貼りだされていたポスター
よく見ると、ゴジラの爪が『ゴジラ展』の文字のうえにかぶさっています。
小さな表現ですが、にくい演出です。
購入した当日券
ショップの脇に立っていた『シン・ゴジラ』のスーツ(?)。撮影許可版
ええと、このゴジラの左側に撮影不可版の『シン・ゴジラ』が立ってました。
このゴジラよりもさらに禍々しい感じになってる感じの。
ゴジラを見るたびに思うんですけど、ゴジラって倒れたらどうやって自力で起きあがるのか謎なんですよね。腕が上体を起こせるほどに長くない感じがします
チケットを切ると、『ゴジラ展』展示会場で撮影できるのは、入場直後に置かれているゴジラと、出口に置かれているゴジラとの合成写真(?)が撮影できるスペースだけとの説明を受けました。撮影はかなり限られてしまったようですが、権利関係とかいろいろあるでしょうし、仕方ありません。ゴジラとの合成写真はお遊びみたいなものでしょうから、入場直後に置かれているゴジラを集中攻撃することにしました。
ゴジラというとこんなゴジラをイメージする人が多いのでは。撮影で使われたスーツだそうです。正面から撮影
ゴジラスーツを斜め左から。照明ライトを逆光的に入れてみました。目が完全に影になっちゃってますけど、逆上しているかのような感じに撮れたので好きです
主人公とも言うべきゴジラのスーツ、どんな角度から撮っても、どんなにズームしてもいいように、細部まで作りこまれています
斜め右から。足のところに穴が開いてますね
足のところに穴が開いてますね。
爆発シーンとかの火薬の使用で開いてしまった穴か、もしくはスーツ内部の機械的な仕組みを動作させるるための電気コードを引き入れるための穴かもしれません。
できるだけ尻尾を入れた構図
これを着て歩くのはものすごく大変なのではと思う重量感があります。
歩きながら打ち合わせどおりに演技もしなきゃいけないし、必要があればプールでの撮影もあるわけで。こんなスーツ着て体を沈めるとか、むりむりむり。
さて。
肝心の『ゴジラ展』ですが。
普通のゴジラファンなら特撮撮影の方法とか、合成の方法を紐解くような特撮映画の謎を解くような展示を期待されたかもしれません。
しかし、この展示は美術館が主催するだけあって趣向はその期待とは違っていました。
初期のゴジラから平成ゴジラシリーズにいたるまで、カメラが回るよりさらに前の段階、コンテや脚本、デザイン画といった映画づくりの基礎段階において撮影所で作成された資料を中心とした展示でした。
撮影で使用されたミニチュアやほかのスーツ(メカゴジラのスーツも展示されていたり)も随時展示されていて視覚的にも楽しめましたけど、ゴジラ映画ではミニチュアも遠景撮影用、中距離での撮影用、近接距離での撮影用などシーンに応じて何種類かのスケールのミニチュアを作成することもあるそうで、展示されていたのは遠景用でした。
ミニチュアに目が行きがちかもしれませんが、展示されている資料のほうがどれも貴重なものばかりでした。
初期ゴジラの絵コンテで描かれているゴジラが、鳥獣戯画に描かれてそうな鬼瓦みたいな顔つきで描かれており、恐竜みたいなスタイルに落ち着くまでいろいろなデザイン画で模索していたり。
驚いたのは、所期のゴジラを撮影しようという段階から、ゴジラが壊すミニチュアを作成するために、本物の東京タワーの設計図からミニチュアの設計図を作っていたり、実際に存在する町並みをミニチュアで再現しようという取り組みが始まっていたことです。そして、ゴジラが侵攻するスピードや方向が綿密に計画され、どのような順番でビルを壊すかミニチュアを配置する地図のうえに順番が振られていたりと、特撮撮影の基本のほとんどが存在していたかのように思われました。
展示を見進めると、作品が進むにつれミニチュアの設計精度がぐんぐんあがっていくのがわかります。ミニチュアが目指していたのは、実在する町並みを再現すること。そのために本物の地図や設計図をあちこちから入手してミニチュアの設計図に生かしていました。そしてゴジラが侵攻することでどのように破壊されていくか綿密にシミュレートし、撮影では一発勝負でシミュレートどおりの規模や順番で破壊していく。資料を見れば、そのために注げるだけの心血が注がれていることがわかりました。
ゴジラの撮影で使用された特撮プールにおいては、ミニチュアとゴジラを配置や進行具合と同時に複数のカメラの配置や動きなども細かく検討されたことがうかがえる資料も展示されていました。しかもその検討をシーンごとにひとつひとつおこなっていたりして、スタッフたちは撮影までの途方もない道のりを築きあげていったことがよくわかりました。
出口をあとにしたところに設置されていた北海道庁旧本庁者(旧レンガ庁舎)のミニチュア。撮影許可アリでした
建築物ミニチュアの再現率はすさまじいと思います。しかもそれを壊してしまうなんて
壊れたあとの破片やむき出しになっている鉄骨、ひび割れたり欠けたり剥げたり焦げたりしている部分や、窓際にかけられているカーテンまで作っている細部の細部までこだわったミニチュア製作への執念は、もはやクレイジーとしか表現できないのではないでしょうか。あからさまに展示されていたので明らかにミニチュアの偽物だと判別できますが、撮影スタジオで綿密に計算された照明とカメラ視点で見たら、本物と見分けがつかないぐらいリアルに見えてしまうかもしれません。
『ゴジラ展』を見た個人的な感想です。
日本の特撮映画では、建築物のミニチュアを再現することに執念とも呼べる取り組みをしてきたことがわかりました。また、撮影で使用された軍艦や戦闘機にもその執念がぶつけられていたように思います。つまり、現実に存在する物を忠実に模型にすることに関してはものすごい才能が投じられてきたのだと思いました。
しかしながら、現実には存在しない物。たとえば怪獣や宇宙船、架空の兵器といった想像上の物体を模型化することには、どうも苦手意識があるような気がしました。展示されていた資料を見て感じた印象ですが、怪獣や宇宙船、架空の兵器といったデザイン画がどうにもアニメチックなんです。ヤッターマンとかのタツノコプロのアニメから影響を受けすぎちゃったんじゃないかっていうデザイン画もありました。現実に存在する物は忠実にミニチュアで再現するのに、現実には存在しない架空のメカニックデザインが、どうにも昭和アニメの思考のまま平成ゴジラまで作っちゃったみたいな印象があり、そこに強烈なギャップを感じてしまいました。建築物のミニチュアは本物と見まごうぐらいのレベルにまでなっているのに、メカニックデザインや怪獣デザインが本物になり切れていなかったような。わたしごときがなにを言うかとお叱りを受けるかもしれませんが、その不釣り合いなバランスはとても勿体ないと思いました。
架空のメカニックに関するデザイン画に関しては、海外のコンセプトアーティストに匹敵するレベルの日本人バージョンを期待していた気がします。
George Hullのコンセプト画サイト
http://www.ghull.com/highlight-gallery/
George Hull氏は映画『トランスフォーマー』のコンセプト画を担当したイラストレーターというかコンセプトアーティストです。
日本はメカニックデザインの発想の原点がどうもアニメーション寄りで、実写寄りではないような気がします。この点は、特撮映画に限らず、いまやどんな実写映像も3DCGで製作することが可能となった映画製作において、世界から大きく遅れをとっている側面があるということになりはしないでしょうか。
また、ひょっとしたらいままで現実には存在したことのない架空の3次元の立体物をデザインすることが、そもそも日本人の苦手とすることだったとしたら。たとえばクルマのデザイン、航空機のデザイン、ロボットのデザイン。機能や耐久性は世界最先端でも、デザインで遅れをとっている側面があるとしたら。映画というアート的な分野に限らず、日本の未来の経済に深く関わることなのではないかとも思ったりしました。
とにもかくにも『ゴジラ展』はとても興味深く記憶に刻まれた特別展でした。
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